上村信カルテットの紹介

 このバンド、いつから始めたのか忘れてしまったので、調べてみたら、なんと97年の11月からでした(そんなに長くやっていたとは・・・)。最初はアルトサックスの緑川英徳さんとドラムの高橋徹君とのトリオ編成で始めましたが、その後、ピアノの三木成能君に加わってもらい、現在はカルテット編成となっています。サックストリオはとても好きな編成なのですが、ピアノが入ると更にサウンドが広がり、いろいろな事がやりやすくなります。おまけにベースでメロディーを弾きたいと思うことも増えました。演奏は、僕のオリジナル曲や、自分の好きな曲などをやりたいようにやらせてもらっています。したがって、普段サイドメンとして参加している他のバンドに比べ、僕のカラーが色濃く反映された非常に珍しい(?)バンドとなっていると思います。ぜひ一度聴きに来てみてください。(現在、メンバーは始めた頃とは変わっています。)





次回のライヴは、2024年2月1日、吉祥寺 Sometimeです。メンバーは、中島朱葉、岩崎壮平、木村紘です。よろしくお願いします!!



よく演奏するオリジナルの曲を少し解説してみます。

"Sam's blues":「Sam」はもちろん偉大なベーシストのひとりであるSam Jonesのことです。テーマ部分をユニゾンで演奏するbluesを作りたいと思って作りました。Sam Jonesの影響が出ているような気がしたので、彼に敬意を表してこのタイトルにしました。

"The last phase of the moon":かつて大坂&原クインテットをやっていた頃、そのバンドのために書いた曲です。割と気に入っていた曲だったのですが、結局バンドはその後すぐに事実上解散してしまい、残念ながらレコーディングされませんでした。タイトルの意味は「下弦の月」という意味です(曲の内容とは特に関係ありませんが)。そういうつもりで付けた訳では無いのですが、今思えば、当時バンドは正に「下弦の月」状態だったんですね。僕の中では、ミンガスと、そしてトニー=ウィリアムスをイメージして作ったつもりでした。後に自分のバンドでアレンジを変えてやっていたものを、the MOSTでも演奏するようになり、the MOSTのCD "Luminescence"に収録。

"The song post":岡崎好朗率いる岡崎brothersのCD発売記念ツアーをするというので、それに合わせて何か曲を作ろうと思い、クインテット編成をイメージして書きました。ちょっとメッセンジャーズっぽい感じ。タイトルの意味は、これまた曲とは特に関係ないのですが、鳥がいつもさえずる、ある決まった場所のことだそうです。僕は鳥を見るのが好きで、鳥の図鑑などをみていたら出ていた用語です。

"Amaoto":以前、自分のバンドのライヴの日までに何か1曲作らなくては、と思い、ライヴの前日に半ば無理矢理書きました。僕が曲を書くと、いつも似たようなブルース系の曲になりがちです。ついいつもの感じのメロディーになってしまうのです。で、1年くらいしてから、サビ部分を付けてみました。うす暗くて、寒い雰囲気の曲なので、「雨音」と名づけました。

"A song for Trane": コルトレーンをちょっとだけ意識して作りました。いわゆるコルトレーンチェンジは使っていませんが。自分の作る曲が、どうもモノクロームな感じがしていたので、シンプルで強いメロディーラインにカラフルな転調を組み合わせたかったのです。でもあんまりカラフルな印象になってないね。

"Lovely seven":僕もたまには変拍子の曲でも作ってみようと思い、書きました。いかにも7拍子ですというのでは面白くないので、ちょっと4拍子にも聴こえるようなメロディーにしています。作った時の僕の中のイメージとしてはジョンスコって感じでしたね。なかなか楽しそうな感じの曲にできたんじゃないかな。タイトルは、the MOSTのツアーで初演したとき、多田誠司氏がつけてくれました。

"Sky-blue":作った時は、スローなボレロでやるつもりでしたが、8ビートでもいいかな?とも思っていました。the MOSTでは3拍子でゆったりやってました。このバンドではあえて作った時の感じに近い4拍子でやってみてます。

"Tone":まだsaxトリオ編成でやっていた頃に書いた曲です。曲にタイトルを付けるのはいつも苦労するのですが、この時もなかなか決まらず、いろいろ考えた末に、自分が子供の頃によく遊んだ利根川の名前を付けることにしました。ですからこれは、トーンではなく、「利根」なのです。ローマ字で書いたら英語だと思って間違う人がいて、おもしろいだろうという、ちょっと意地悪な遊びです。曲自体はもちろん利根川を意識したわけはなく、自分としてはKeith Jarrettのいわゆるアメリカンカルテットっぽい感じをイメージして作ったものでした。最初はフリーテンポでやろうと思ったのですが、なかなかうまくいかず、今のようなかたちになりました。アルトサックスの多田誠司さんのthe MOSTの2枚目のCD" Force"に収録されています。

"Tarjeta amarilla": Lovely sevenとほぼ同時期に作った曲で、こちらは5拍子。Lovely sevenと同様にメロディーと伴奏の拍子を微妙にずらして、おもしろい効果を狙ってみた曲です。かなりひねりまくったメロディーなので、非常に難しく、気をつけていないとはじき出されて戻れません。という訳で、スペイン語でイエローカードという意味のタイトルにしてみました。the MOSTのCD"re:mark"に収録。

"With a smile": 鍵盤楽器で曲を作れるようになりたいなと思い、去年(2007年)今更ながら電子ピアノを購入。で、作ってみた曲です。とは言ってみても、コードの押さえ方もよく分からないので、結局はほとんど左右の人差し指しか使えなかったのですが・・・。僕はひとが怒っているところや、悲しんでいるところを見るのが嫌いです。にこやかで楽しそうにしているひとを見るのが好き。みんなが笑っていられたらいいなー、というような意味でこのタイトルをつけました。the MOSTのCD "Luminescence"に収録。

"Silver rain": ちょっとクラッシック的な雰囲気を意識して作ってみました。

"Dendrobates": CD "Transience"を作るにあたって、アップテンポの曲が欲しいと思い書きました。メロディーも構成もかなりシンプル。曲名はヤドクガエルの学名から拝借しました。曲名は後から付けたのですが、そうしてみるとカエルが跳んでいるようにも聴こえるから不思議なものです。

"Plvs Vltra": ラテン語で「もっと遠くへ」という意味だそうです。スペインの大航海時代に新大陸を目指す標語のようなものだったそうで、古い建物などのあちこちに書いてあったりします。曲はもともとはthe MOST用に書いたもので、ちょっと難しいです。

"Where has he gone?": レッスンをやっていた教室にピアノがあるので、生徒が来るまでの間に曲のアイデアを考えることがあります。そういったアイデアを膨らませて曲にしたものです。最初はバラードを作りたかったのですが・・・、結局ミディアムスイングの曲になりました。the MOSTのCD"True courage"に収録。

"Miss you": 40数年も生きていると、少しずつ「別れ」を経験する事が増えて来ました。仲間などを事故や病気で失うのも仕方の無い事ではありますが、やはり寂しいものです。うまく言えない懐かしく寂しい気持ちを曲にしました。the MOSTのCD"True courage"に収録。

"Little signs of spring": やはりレッスンの時に生徒が来られなくなってしまい、その空いた時間に作った曲です。盆栽らしきものを始めて6〜7年になりますが、春に新芽が出て来るととても嬉しいような、元気づけられるような気分になります。春の嬉しい感じが合っているような気がしたので、このタイトルにしました。

"Time": 時間というのは僕ら音楽家にとって、非常に大事なものです。時間が流れない事には音楽が成り立ちませんからね。しかし時間というのは大切であると同時に、残酷と言ってもいいくらい非情なものだと感じます。自分も老化していくし、家族や友人も、みんな年を取って行きます。街もどんどん変わって行く。いろいろなものが時間とともに失われていきます。ま、ネガティヴな見方をすればなんですけどね。そんな寂しい感じを曲に合わせてみました。

"Raindrops": 6月6日に作ったので、こんなタイトルにしました。リズムチェンジの変形って感じの曲です。4度の音程でできたメロディーは割とありきたりかもしれませんが、シンプルながら、ほんのちょっとだけ気を利かせたコード進行にしたつもりです。

"Maebashi": 故郷に帰ることは年に数回しかありませんが、帰るたびに懐かしいけど、寂しいような、悲しいような、なんとも複雑な気分になります。思い出して楽しいこともあれば、あまり思い出したくないようなこともあるし。そんな感じを曲に重ねてみました。

"For Charlie": チャーリーヘイデンも亡くなってしまいましたね。大好きなベーシストのひとりですし、特に作曲面ではとても大きな影響を受けた気がします。彼に敬意を表してタイトルにしました。

"Carving the air": なんとなくジョーヘンダーソンを意識して8小節分のメロディーを作ったのですが、途中からコルトレーンが入って来て、最後はマクリーン的かも、みたいな曲です(笑)。とにかくサックスで演奏することを想定した曲ですね。ベースラインを弾く作業は空間に線を引いてハーモニーを切り出すような感覚があります。そんなところから、このタイトルをつけてみました。




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